1980年代後半にアメリカに住むようになって、最初に驚いたのは、物の値段が場所によって大きく異なるということだった。たとえば、タバコは日本ではどこで買っても同じ値段であるが、同じニューヨークのなかでも、バー、スーパー、その他ですべて値段が異なる。また、産地のバージニア州ではニューヨークの半額以下である。日本でも物によって再販価格制が崩れてきており必ずしも同一価格ではないが、同一価格のものが多い。アメリカの場合は価格は統制でなく市場で決まっている。飛行機の運賃も、日時、路線により大幅に異なり、長距離が高く、短距離が安い日本の航空運賃とは様相を異にしている。たとえば、長距離便で競争の激しいニューヨークーロスアンジェルスは100ドルであるのに対し、ニューヨークから近郊の空港まで300ドルであったりする。また、高級住宅地のスーパーと低所得者層の居住区のスーパーでは物の品質と値段が格段に違う。アメリカの場合は値段を確かめないと随分違う。こうしたことから、インターネットで価格比較できるサイトが発達したのではないかとおもう。日本でも同じような傾向になってきている。
また、アメリカの物価を考える際に重要なのが、低所得者層の所得水準である。米国の勤労所得世帯の4分の1以上が、貧困基準の2倍以下の所得しかない、つまり、4人で$36,000で4百万円以下のWorking Poor世帯である。こうした低所得者層が暮らしていける物価水準でなくてはならないのが、アメリカの実態であり、常にFEDがインフレを警戒しているのも、こうした多数を占める低所得者層が暮らしていける物価水準を維持するためでもある。一般に、アメリカ全般の物価水準は世界に比べて極めて安い。食料品、衣料品、ファーストフード、ゴルフ料金、映画代、ガソリン、ビールなど、地位、場所により異なるが、日本、欧州に比べ、安いものが多い。ファーストフードで食事をし普通に余暇を楽しむのであれば、一人$10,000あれば、何とかなるのである。一方で贅沢をすればきりがない位、いくらでも高級なものがあふれており、使う気になればいくらでも使えてしまうのが、アメリカである。
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